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9.ARAUツアー3(イクセル池之端)

ARAU tour 3 (Around the ponds of Ixelles)

 コーチバスはさらに南下しイクセル区に向かう。19世紀末開発された高級住宅街の一画、イクセル池之端をバスは走る。1850年までこのメルビーク谷一帯は沼地であったが現在の2つの池を残して埋め立てられブリュッセルのアッパークラスのための高級住宅街へと変貌した。バスはE.ブレロのドゥ・ゴール将軍通り(avenue de General de Gaulle)の住宅(085 habitation/Ernest Blerot)の前で止まった。この建物、ファサードはかなりシンプルでプレーンだが、バルコニーの手摺が素晴らしい。特にエントランスポーチの手摺が良い。自由奔放に伸びる植物の様にアール・ヌーヴォー・カーブを描きながら空間を飛び回る鍛鉄の線材に、これも回転し、ねじれ、くねりながら絡み付く鋳鉄製の葉。エントランス・ポーチには鉢植えの草花が飾られ、工業製品の手摺金物に色鮮やかな自然の花が咲いた様な感じで、絵になるアングルを探して思わずシャッターを押したくなる。ブレロはドゥ・ゴール将軍通りとヴィライン14世通りの角に自邸を建てているが、彼の死後アールヌーヴォー再評価の気運が高まる以前の1964年取り壊され、貴重な図面や資料も四散してしまった。
 次もブレロの作品だ。ヴィライン14世通り(rue Vilain ャ)の9番地(086 habitation/Ernest Blerot)11番地(087 habitation/Ernest Blerot)に2棟並んでいる。隣の7番地のロッジア風テラスの住宅(088 habitation/Franz Tilley)はフランツ・タイリーの作品だ。少し進むとラ・ヴァレ通り(rue la Valle)に出る。交差点の角に建つ集合住宅を見てみよう。ラヴァレ通り40番地(089 habitation/Ernest Blerot)と、向かいのヴィライン14世通り(rue Vilainャ)22番地(090 habitation/Ernest Blerot)がブレロの作品だ。そしてヴィライン14世通り17番地がエルネスト・デュランの作品(091 habitation/Ernest Delune)だ。エルネスト・デュランはこの角を右に曲がったラ・ヴァレ通りの右側のブロックの大部分の住宅を設計している。ブレロの影響がかなり強く感じられる住宅群だ。エルネスト・デュランもブレロの様に建て売り事業を行ったのだろうか。建築家が設計し分譲する形態は、設計の段階で自分のやりたい様に出来るので建築家にとって理想的に思える。しかし、この住宅群を見ていると、当時のマーケットを考え、建築家自身の感性との調整を計っている事が良く分かる。分譲するリスクを建築家は背負わなければならない。必ずしも世の中はそう甘くはない。まあ、それは今の私が東京に帰れば、世の中を支配しているシステムと自己表現との二律背反と云う、日常的に抱えている問題でもあるのだが。エルンスト・デュランはラ・ヴァレ通りに11の住宅を建てている。
 エルネスト・デュランの高級住宅群を右手に見ながら北上すると、ラック通り(rue du Lac)と交わる角に赤レンガの住宅(092 habitation/Ernest Delune)が建っている。レオン・デュランの作品だ。階段室の外壁面に白施釉レンガで階段の形状をグラフィックにデザインしているのが面白い。1軒はさんで6番地(093 habitation et atelier/Leon Delune)にも彼の作品がある。彼等は兄弟で設計事務所を開いていた様だ。6番地のアトリエは中々素晴らしい。エントランス部の開口と階段室の開口のグラフィック的処理、そして3階アトリエの大ベイ・ウインドウのバランスが良く、ファサード全体をグラフィックにまとめている。このアトリエの扱いはドゥ・ファック通りのポール・アンカール設計のルネ・ジャセンのアトリエに似ている。内部から見る事が出来ないのが残念だが、エントランスと階段室大窓のステンドグラスが素晴らしい。ベルビュー通りにもブレロの住宅(094-a habitations / Ernest Blerot) (094-b habitation / Ernest Blerot)が2棟ある。30番地(094-a)のパーラーのピクチャーウインドウにかけてあるフレミッシュ・レースのカーテンが住む人のセンスをうかがわせる様で素敵だ。
 ツアーはこの後、再びアンスパック大通りに戻り、ホテル・メトロポール前で解説者への感謝の拍手とともに解散となった。時間はお昼をちょっと過ぎている。近くの証券取引所(Bourse)横のファルスタッフのカフェ・テラスでランチにしよう。