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11. ストロヴァン巡礼1(ルイ・ベルトラン大通り)

The Strauven pligrims 1(Avenue Louis Bertrand)

avenue Louis Bertrand

 午後はストロヴァン巡礼だ。まず、目指すはあのベルチンジェトリックスの砦だ。パルクから92番、又は93番のトラムに乗る。トラムはロイヤル通りを北上し、聖マリー教会(St. Marie)の2股交差点を右折する。左に古い大きな教会が見えたら、そこが聖セルヴァス教会(St. Servais)だ。トラムを降りて、アベニュー・ルイ・ベルトラン(avenue Loise Bertrand)の緩やかな坂を下る。右手にストロヴァンの住宅(072 habitation/Gustave Strauven)が現れる。ベルチンジェトリクスの砦はメインに取っておき、まずはスターターとしてこの住宅を味わう事にしよう。
 白の施釉レンガにアクセントとしてブルーストーンが使われている。ストロヴァンはオルタの弟子だが、オルタとはまったく違う印象のデザインだ。カーブが違う。ストロヴァンのカーブは何か呪いをかけられた様な異様な曲線だ。オルタ・カーブが流麗なとか、躍動感溢れるとか、健康的な形容詞で表現されるのに反し、ストロヴァンのカーブは激しく、情動的で、過剰で、そして時には痙攣的あるいは病的でさえある。この住宅はその様なストロヴァンのエモーショナルなデザインを十分に味わえる作品だ。
 この住宅の向かいに、F.エメルソートの戸建住宅(073 habitation/F.Hemelsoot)集合住宅(074 commerce et habitation/F.Hemelsoot)がある。坂を下り、いよいよケルト連合軍最後の砦だ。そう、私にはこの建物がその様に見える。先進文化としてのローマ的なるものに徹底抗戦を挑むケルト・ネイティヴ最後の砦に見える。
 全体がよく見える様に、向かいのエメルソートの集合住宅の前に立ち、じっくりファサードを観察しよう。ジョセファ通り(rue Josaphat)を挟んで、向かい合って、この異様な2棟の砦は建っている。左側の61-65番地(075 commerce et habitation/Gustave Strauven)は白とオレンジの施釉レンガにブルーストーンの組み合わせ、右側の55-59 番地(076 commerce et habitation/Gustave Strauven)はオレンジと赤の施釉レンガにブルーストーンの組み合わせ、それに所々にグリーンを基調とした絵タイルが貼り込まれている。コーナーのヴォリュームの一部が45度に振られていて、砦の見張り台の様に見える。
 61-65番地の歩道に張り出したアーケードのガラス・キャノピーが凄い。「アール・ヌーヴォー・フランボワイヤン(炎の様に燃え上がるアール・ヌーヴォー)」とか「火焔式ゴシック中毒の美学」とか揶揄されるストロヴァン・デザインの真骨頂だ。ガラスを支えるスチール製のフレームは燃え上がる炎の様に、ねじれ、くねり、舞い上がっている。2棟とも1階はブラッスリー・レストランとなっている。55-59番地の集合住宅の壁にはおそらく聖セルバス教会と思われるタイル壁画が有り、腰のブルーストーンには「Gustave Strauven Architecte 1906」の文字が刻み込まれていた。
 本日のメインディッシュを十分堪能したら、デザートに周辺のアール・ヌーヴォー建築を見てみよう。アンリ・ジャコブ 設計の第一小学校(077 ecole communal #1/Henri Jacobs) (078 ecole communal #1/Henri Jacobs)のエントランス部がジョセファ通り(rue Josaphat)に2ケ所、裏のルーシュ通り(rue de la Ruche)に1ケ所ある。これもインテリアが素晴らしいのだが、3ケ所とも違ったデザインなのでエントランス部分を外部から眺めるだけでも楽しめるだろう。ケッセル通り(rue Kessel)86番地(079 habitation/F.hemelsoot)88番地(080 habitation/F.Hemelsoot)にフランソア・エメルソートの住宅が隣り合わせで2棟建っている。88番地(080)が面白い。51番地(081 habitation)の住宅は作者不明だ。
 聖セルヴァス教会まで引き返し、アーシュ通り(chaussee de Haecht)を少し南下すると、左側にオルタのオートリック邸(071 hotel Autrique/Victor Horta)がある。タッセル邸と同じ1893年の作品だ。エントランスドア廻りのホワイトストーンのレリーフ、ファンライトの面格子など、ゴシック色の非常に強いデザインだ。3階バルコニー部分を見ると、コーニスとそれを支える支柱が木造である事が分かる。それも生地仕上げとなっている。これは珍しい例ではないだろうか。バルコニー部でセットバックした外壁にはスグラフィット画法(掻き落としによるフレスコ画法)によると思われるオルタ・カーブが描かれている。パラペット部にはガウディ・ライク(オルタの方が先だからオルタ・ライクか)なデザインの換気筒が付いていて、デプレ・ヴァンデベルデ邸の換気筒のデザインの最初の試みを見る事が出来る。